帰りの飛行機

今回は、学会よりも帰りの飛行機が一番楽しかった。

Alabama帰りのOrlandoでの乗り換え便、隣の席の人はPit Crewっぽいシャツをきていた。その週末に行われる世界3大レース"Indy 500"の関係者かきいてみると、やっぱりそうだった。すこし無愛想で、おっかない風貌の奴だったので話ははずまなかった。

一時間ほど居眠りしたり、だらだら学会のプログラムを読んで勉強していると、隣の人が話しかけてきた。プログラムが目に入ったのでどんなことやっているのか興味をもってくれたみたいだ。学校でやっていることや、最先端の研究なんかを話すと喜んでくれて、こっちもMotor Sportsについていろいろきいてみた。

この人はS社のMotor Sports Marketing担当のAndrewさんという人だった。スポンサー側の人で、普段はNASCAR専門だが、たまにIndyCar Seriesでも仕事するとのこと。今回のIndy500は完全にオフで、同僚といっしょに騒いで観戦すると言っていた。

Motor Sportsはあまりしらないので、話についていけなかったが、自分の仕事とMotor Sportsへのリスペクトと情熱が伝わってきて、とてもいい気分。こっちもわくわくする。

いくつか裏情報やグチも教えてくれた。Motor Sports界全体が"Green(環境にやさしく)"を推奨していて、車の燃料が半分はエタノールに変わっていて納得がいかないこと。H社のエンジンが素晴らしいこと。ドライバーはほとんどいい人だが、性格が最悪なひと(名前は忘れた)も多いこと。でも過酷な仕事なので性格が曲がるのは仕方ないと言っていた(佐藤琢磨は評判通りすごいいい人らしい)。

Aさんにもエンジンがかかってきて、最初の無愛想さは何だったのかというほど話がはずみだす。この飛行機はIndy500を観に行く客が多くいて、その人たちも会話に参加してきて、話の面白いAさんはちょっとしたスターのような扱いだった。これだけわくわくしたのは、元プロ野球選手の有名なスカウトの人と話したとき以来だ。

Aさんは仕事で「自分がやっていることが好きなんだ」ということが表現できている数少ない人だと思う。どんな仕事をしようが、個人的にもそこを目指していきたいと思った。

Indianapolisに着いた際に、

"Please cure diabetes(はやく糖尿病の治療法をみつけてくれ)!"

と言われた。Aさんの話をきいて、専門を代えてS社に就職しようかなと、一瞬夢みていた自分を現実に戻してくれた言葉だ。