シカ

夕暮れ時にシカに遭遇した時の話。

民家のでこぼこの裏道を車で通っていると目の前にでかい動物が現れた。シカだ!普通、シカは臆病なので人を見るとすぐに逃げ出す。でも身構えてはいるが、このシカはずっとこっちを見て逃げない。この辺りでシカは見かけた事が無いし、間近でシカに遭遇してすこし感動する。

敵だと思わせないため、窓を開けて、話しかけながら前を通るとシカは逃げずにつっ立ってこっちをみている。通り過ぎた後、駐車してもどって見るとやはりシカがいた。しかも2匹だった。こんな機会はないと思い、5mまで近づくと、ここがシカたちが逃げ出さない限界だと察したのでとりあえずしゃがむ。

「餌をやるからこっちへ来い」というふうに言って身振りをすると、シカは珍しそうに座ってずっと眺めてくる。薄暗いなか、シカの黒いシルエットは美しい。5分ぐらいそんなやり取りをしたが全然こっちに来ないし、そろそろシカに迷惑になるんじゃないかとおもい始めたので帰った。得難い体験だ。


たとえるならば、「もののけ姫」でアシタカがシシガミに会った時のような非現実的な感じがあった。民家に迷い込んだシカたちはもしかすると神聖な何かだったのだろうか。それとも、民家の生ゴミを食い漁っている腹の減ったシカだったのだろうか。前者だと信じよう。