バス停


宿に帰るためバス停でまっていると、見たことのある中年の黒人がどこからともなく現れた。Aさん登場だ。ビール片手に酔っぱらっていた。

そんで、飯食うための金を$3ほどほしいと言ってきた。

前の日に75セントあげていたので、「またかよ」という面倒な気持ちになった。実際、金は節約したいし、ドラッグの蔓延するアメリカで、お金をあげると何に使われるか分からないところもあるし。

ただ、金とは関係なく、Aさんは親切にいろんな話しをしてくれていたので、腹へったままでいてほしいという気持ちもない。New Orleansの生活のことから、2005年のハリケーンの被害の聞きにくいことまで貴重な話をしてくれていたのだ。


そこで、マクドナルドのただ券があったので、それをあげようとした。あんな不味いところでは食わないと怒られた。プライド許さないのだろうか、そこまで落ちぶれていないとでも言いたげだった。馬鹿にする意図はまったくなかったので少しムカついた。


お金を手渡しするのはいやなので妥協して、おれも小腹がへっていたので一緒にどっか食べに提案した。すると、よっしゃ行こうぜ、という感じになった。単にあげるよりもそれなら気分はましだ。

近くのコンビニに行って、Aさんにチキンウィングを、そんで自分にはお勧めされたフィッシュフライを頼んだ。それをバス停に戻っておいしく食って、アメリカの就職難の話なんかをきいた。景気のせいもあるが、常にビールを飲んでいる人(Aさん)が職にありつけるとは思えない(それはさすがにいわなかったが)。ただ飲まずにはやってらんねぇようなきびしい状況なのかなとも思う。


その間、おっかない愛想のわるそうな黒人たちが何人か話しかけてきた。Burbon通りで働いている人たちで、軽く雑談をした。ここの黒人は、観光客なれしているとはいえ白人にも、アジア系とも壁があり冷たい感じだったので、普通に話せたことがよかったし面白かった。Aさんと飯を食いながら話していたので心を許してくれたのだろうか。


バスが来たのでAさんとお別れをした。握手を交わした反対の手にはまだこれから飲むであろうビールの入った缶が握られていた…。


このさき、華やかなNew OrleansのBurbon通りをおもうときは、必ずこのバス停のことを想起するような気がする。貧富の差の激しい世界。楽しくもあり、なぜか悔しいような変な気持ちにさせる場所だ…。その後、朝5時の飛行機でIndianaへ帰った。