糖尿病研究についておもうところ

新しい研究室に移って、糖尿病研究自体は新鮮でいい感じだが、正直、物足りなさを感じる。その理由は、自分の研究の方向をはっきり決めていないこともある。それに加えて、もっと根本的な事で、こんなもの研究して一体なんの役に立つんだ、という思いがあるのだ。それは糖尿病と社会的背景が理由にある気がする。


生物/医学研究は興味があるし、好きなんだが、正直なところ、やっていることの将来への貢献度がよく分からない。かんたんにやっている研究を言えば、将来的に糖尿病の薬や治療法につながるための研究をしている。だが、(どの研究についてもある程度言えるが)たとえ薬が作れたとしても、たとえば、それを手に出来るのは一部の恵まれたひとたちだけで糖尿病そのものをなくすことはできない。


そして、とくに生活習慣に関係のふかい糖尿病二型なんかは、薬なんかより食生活の改善のほうが大事だ。研究よりも、いまだにどこへ行っても(病院の中でも)売られている炭酸飲料やお菓子をなくすほうが効果があるのだ。ジャンクフードなどの安価な食い物は、炭水化物や脂肪分が過剰だ。したがって、金がない層が食い物の影響で糖尿病になりやすい。金の関係で、薬を作ってもあまり恩恵を受けないと思われる人たち。食い物と貧富の問題が大きく関わっている。


そういう意味で「糖尿病」は社会と密接に関係している。貧富の格差の問題から、食品自体の問題、食品/薬品会社の利害関係などの政治的な問題。創薬研究で貢献出来ることよりものはるかに影響が大きい。


上のような理由があって、糖尿病の創薬研究というのを個人的にはモチベーションにはできない。それよりも、研究からどの病気にもつながる共通した現象を見つけること、そして将来研究で食って行けるための技術を身につけることをモチベーションにしてきた。ただ、それでは弱い。というわけで、いまある歯痒いおもいを埋めるために、「糖尿病」というキーワードから研究室でやる創薬の研究以外に、もっとくわしく社会の問題からも「糖尿病」を理解したいという気持ちがある。