座頭市物語 (1962)

1962年公開の勝新太郎の出世作。最近は一昔前の映画をみていて、その一環として観た映画(アメリカ国内では無料でみられる)。

面白い。昔の映画なのに、いまの映画にない要素があり逆に新しい。1962年頃は日本の映画もモノクロからカラーに代わる転換期。いまと変わらないほど映像の質は高く、カラーだとにぎやかすぎるだろう風景も、モノクロだと統一感があって美しい。撮影の仕方も今と違い、全て固定されたカメラで撮った映像だ。つまり、レールに沿ってカメラをスライドさせて、流れるような映像を撮るシーンがなかった。そのごまかしがない感じがまたよい。

そして、ストーリーはシンプルで、娯楽も芸術性があって完成されている。動と静、喜怒哀楽をうまく表現できていた。いままで、「座頭市」というと安っぽいキャラクターのイメージしていたが、この作品をみるかぎりではそれ以上のものがあった。

作品全体として素晴らしいが、この映画はやはり勝新太郎の演技がなくしてはありえなかった。

その演技は、ベテラン俳優のように洗練されている。盲目のやくざという豪快で繊細な役をうまくこなした上で、殺陣の上手さで見せることもできる。ほぼ全ての演技を白目か、目をとじてやっている。その生々しさは常軌を逸していて、観たことない画が、一瞬、人を不快にさせる。ただ、それさえも気にならなくなるほど自然な演技だ。その上、演技力だけでは説明のできない風格と徳があるが、これは生まれながらの資質と歌舞伎に触れて培った素養が理由だと思う。

興味深いのは、勝新太郎はこの映画でブレークするまで売れない役者としてなんと70作品以上も映画に出演した。それは、いまある、「粗暴でいい加減」というパブリックイメージからすると意外。仕事にたいする気持ちは、理解をこえるほど真面目で情熱的で、執念深い役者だったのかと思う。

まとめると、この作品は映像も演技も話もすばらしく、今観ても良さの分かる映画だと思う。若い俳優のその後の成功を確信させる。

一見の価値あり。